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- Column -

第3回 オリンピック後の東京の動向

「オリンピック後は景気が低下?」

 2020年に開催される東京五輪は、東京の力を高め、日本の未来に光を当てられるのか。
宴(うたげ)を終えた後の経済状況はどうなるのか。過去を振り返ってみると、五輪後に景気が悪化した国の例は少なくありません。
たとえば、14%を超える経済成長率を維持していた中国は、2008年の北京五輪後、同年と翌年の成長率を9%台まで低下させています。2004年にアテネ五輪を開催したギリシャも、翌年以降は経済が低迷し、その後、債務問題で世界中を騒がせました。
 実は1988年のソウル五輪以降、夏季の七つの大会前後の経済成長率を比べると、開催の翌年に成長率が上昇したのは1996年のアトランタ(米国)と2012年のロンドン(英国)のみであることが分かります。残りの5カ国では、成長率がすべて低下しています(図1)。
 1964年の東京五輪の際も、翌年は不況に見舞われました。五輪は国の威信を懸けて行うビッグイベントのため、大規模な公共事業が実施されることが多い。加えて「ドリーム効果」によって、国民も通常より多くの消費をしやすくなる。その分、五輪が終われば、反動が出やすくなるのです。

「インフラとオリンピック」

 特に経済が発展途上の国は、この機会に乗じて遅れたインフラ整備を一気に進めようと巨額の投資を行うことになります。そのため、東京では首都高速の幹線部分や環状7号線の西半分をわずか5年で完成させるという快挙を成し遂げました。また東京と大阪を新幹線で結び、国土開発の成長軸である太平洋ベルトの強化もできました。しかし、これほど急激に投資を行えば、その反動が出るのも無理からぬところです。発展途上の国では、五輪の直後に経済の低迷の現象が見られます。
 これに対し、すでにインフラ整備が一定水準に達している先進国では、途上国ほど急激に投資をする必要はなく、しかも経済規模が大きいので、五輪に関係する投資の全体への影響も大きくありません。今回の東京は、このケースに当てはまると考えられます。
 では、2020年の東京五輪後、東京が失速しないためにはどうすればよいのでしょうか。開催に向けて、すでに多くの都市整備、民間企業のビジネスチャンス発掘、旅行者の増加など、さまざまな動きが活発化してきています。また、建設需要の高まりで建設労働者の不足、工賃や資材価格の上昇が懸念事項となりつつあります。開催まで、経済活動はますます上向きになることが想像されます。

「五輪開催を控えた東京ができること」

 問題は、開催後の揺り戻しです。過熱した経済が一気に冷え込み、不況となる懸念もないわけではない。だが、前述のような過去の開催国のデータや、2012年のロンドン五輪の事例を見る限り、反動の懸念は取り越し苦労に終わる可能性が高いと思われます。
 具体的に、五輪開催後に東京が沈まないためのポイントは、大きく二つあると考えられます。一つは、羽田空港の一層の国際化です。海外から東京への訪問者数の伸び悩みは、かねて東京の弱点でした。しかし五輪の開催を契機として、東京の国際アクセスが飛躍的に向上すれば、大会終了後もレガシー(遺産)として残すことができるのです。
 もう一つのポイントは、2027年に東京-名古屋間で開通する予定のリニア中央新幹線です。五輪で都市力をバージョンアップさせた東京が、わずか40分となる名古屋をその巨大都市圏に組み込んで、いよいよ新たな東海道スーパーメガロポリスの形成を始めるのです。日本列島の姿は大きく変わるのです。人口減少社会における劇的な歴史の転換点が、そこに待っているはずです。その時、東京の役割はますます高まるのです。

市川 宏雄hiroo ichikawa

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