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海外出稼ぎは本当に稼げる? 人気国とメリット・注意点を解説

日本にこだわらず、海外で働くことを選ぶ日本人が増えています。特に若い世代の間では、ワーキングホリデー制度を利用して渡航し、現地で働きながら生活するというスタイルが人気です。

2023年には、オーストラリアが日本人に発給したワーキングホリデービザが過去最高の1万4398件に達しました。実際、海外に出稼ぎすると儲かるのでしょうか。そして、どの国なら稼げるのでしょうか。

海外への出稼ぎが人気?

ワーキングホリデー、略してワーホリは、若者対象のビザ(査証)制度です。基本的に18~30歳までが利用でき、最長1年間、一定の就労をしながら海外生活ができます。

ただし、行先は日本がワーキングホリデー協定を結んでいる国に限られます。

日本が最初にワーキングホリデー協定を結んだ国はオーストラリア。1980年のことでした。その後はカナダやニュージーランド、イギリス、韓国など増えて、2025年1月1日時点では30カ国と協定を結んでいます。人気は英語圏のオーストラリアやニュージーランドのようです。

では、なぜ海外で働くことが人気になっているのでしょうか。

●理由1: 日本の賃金が上がらない

出稼ぎ人気の大きな理由は、日本国内の賃金が伸び悩んでいることです。

国際的に見ると、日本の平均賃金はOECD加盟国34カ国中25位となる46,792ドル(OECD「Average annual wages」(2023年))。OECD加盟国の平均(58,232ドル)を1万ドル以上も下回っていて、長時間働いても生活が苦しいという声は少なくありません。

日本で働くより海外のほうが稼げる、と考える人が増えても不思議ではなないでしょう。

●理由2: 為替の影響(円安)

為替相場の変化も大きな要因です。

近年の円安により、海外で得た収入を日本円に換算すると、より高額になります。

たとえば、オーストラリアでは、2024年7月~2025年6月の全国最低賃金は時給24.10オーストラリアドル(AUD)ですから、1AUD=90円とすると、時給は約2170円です。

日本の最低賃金が全国平均で1000円台であることを考えると、海外の方が効率よく稼げる状況にあると言えます。

●理由3: 日本の労働環境への不満

日本の労働環境に対する不満も見逃せません。長時間労働、年功序列、昇給の遅さなど、働き方に不自由を感じている人は多く、「違う文化の中で自分らしく働いてみたい」と考える人もいます。海外での就労経験はキャリアの選択肢を広げることにもつながり、単なる出稼ぎ以上の意味を持つでしょう。

出稼ぎで稼げる国はどんな国?

実際に海外で出稼ぎをするなら、どんな国が稼げるのでしょうか。

それには、やはり最低賃金の高い国がいいでしょう。どんな仕事についたとしても、稼げる最低ラインが高いほうが確実だからです。

オーストラリア、カナダ、ニュージーランドはワーキングホリデー制度での渡航先としての人気があり、かつ最低賃金も比較的高めです。

出稼ぎ先として有力候補になるでしょう。

●オーストラリア

為替
1オーストラリアドル(AUD)=93.60円(2025年4月1日終値)
最低賃金:時給24.10AUD →時給約2256円

特徴
オーストラリアは観光立国なので、日本人が日本語を使って観光客相手に働く職場も多く、仕事が見つけやすい。日本食レストランもいいが、そこだけの経験だと英語の上達はいまひとつの場合も。
また、農場の仕事もある。オーストラリアは食料自給率が高く、農場で3カ月働くと2年目のセカンドワーホリがもらえる国でもある。農場で働いただけで100万円貯金するワーホリもいるとのこと。

●カナダ

為替
1カナダドル(CAD)=104.60円(2025年4月1日終値)
最低賃金:時給約14〜16CAD ※時給は州によって異なる →時給約1464円~1673円

特徴
仕事の募集が多いうえ、日本人観光客向けの接客業なども充実している。チップが多くもらえることも。観光地での仕事は見つけやすいようだが、地域によって使われる言語が英語・フランス語と異なることに注意が必要。

●ニュージーランド

為替
1ニュージーランドドル(NZD)=85.2990円(2025年4月1日終値) 
最低賃金:約17.70NZD →時給約1510円

特徴
自然豊かで治安も良く、農業や観光業の仕事が多い。 同一雇用主で1年間働けるのも特徴だが仕事はオークランドに集中している。 農場の仕事を3カ月するとワーホリが3カ月延長できる。
これらの国では、時給換算で日本の最低賃金(全国平均で1055円)を上回る水準だということがわかります。
もし、オーストラリアで、フルタイム(1日8時間×5日)で週40時間働けば、月に約36万円稼ぐこともできる計算です。日本では同様に働いても、時給1055円だとすると、16万8800円。かなりの違いがありますね。

海外に出稼ぎに行く3つのメリット

海外に出稼ぎに行くメリットには、次のものがあります。

●海外で働くメリット1:為替の恩恵を受けやすい

先述の通り、円安局面では海外通貨の価値が相対的に高まるため、稼いだお金を日本円に換金したときに、為替メリットにより高額になる場合がありおトクになります。為替レートが円安になったときに生じる利益を「為替差益」といいます。

とはいえ、為替は常に変動しており、ときに急激に上下することもあります。

2025年4月も、米トランプ大統領が関税を導入することを発表したことによる「トランプショック」で為替レートは乱高下しました。今後も大きく変動する可能性があります。為替レートが円高になったときに生じる損失を「為替差損」といいます。

●海外で働くメリット2:語学力と異文化理解の向上

海外での就労経験は、語学力の上達につながるだけでなく、異文化に適応する柔軟性やグローバルな視野も身につきます。

ワーキングホリデーは基本的に1年ですが、短期間でも海外で生活することが将来への大きな財産になるのではないでしょうか。

●海外で働くメリット3:キャリアの幅が広がる

海外での勤務経験があると、帰国後の就職活動でも「グローバル人材」としての評価を受けやすくなります。実際、海外経験者を積極的に採用する企業も増えています。

グローバル企業への就職や、外資系、海外に取引先のある日系企業など、選択肢が大きく広がりそうです。

海外出稼ぎのデメリット・注意点

一方、海外出稼ぎには注意点もあります。

●海外で働く注意点1:仕事が簡単に見つかるとは限らない

現地での求人は時期や地域によって差があり、特に英語力が乏しい場合には職種が限られることもあります。事前に現地の求人情報を調べ、応募の準備をしておくことが重要です。

人手不足の日本では、外国人のアルバイトにも丁寧に説明しているかもしれませんが、海外ではもっとドライだと感じるかもしれません。

言葉も仕事も、雇い主の求めるレベルにないと、あっさりクビになる場合も。相手の言うことが聞き取れなければ仕事もできません。ヒアリング力はしっかり鍛えておく必要があるでしょう。

●海外で働く注意点2:物価の高さ

最低賃金が日本より高いということは、生活にそれだけお金がかかるということでもあります。

たとえばオーストラリアやカナダの都市部は物価が高く、家賃や食費、交通費などの生活費が日本以上にかかるケースもあります。

「稼いでも生活費に消える」というリスクを考慮し、予算管理が求められます。

また、節約のしすぎで体調が悪くなっては本末転倒です。

稼げないだけではなく、医療機関にかかれば費用もかかります。クリニックを受診するにも、日本のように健康保険を利用して安く、受診したい時に受診したい医療機関に行くことができるとは限りません。

●海外で働く注意点3.:ビザや労働規制の確認が必要

ワーキングホリデーは原則として一時的な滞在・就労を目的とした制度であり、国によっては働ける期間や職種に制限があります。現地での就労ルールをしっかり把握しておきましょう。

なかには、トラブルに巻き込まれてしまうこともあります。

ワーキングホリデービザの申請には、金融機関口座の残高証明書や健康診断が必要になる場合があります。

適正な書類で正しく申請することはもちろん必要なのですが、申請代行業者によって書類の不適正処理が行われたことで、出国前や海外滞在中にビザを取り消されてしまうことがあります。

また、現地での仕事や住まいをあっせんしてくれるはずの業者に、高額な代金を要求されるトラブルもあります。

安全な日本から渡航者はガードが甘く、狙われやすいとも言われます。

自分の身と財産は自分で守る意識が必要です。

海外への出稼ぎはしたほうがいい?

海外出稼ぎのメリットとデメリットを見てきました。若い時の海外体験は、何ものにも代えがたい、と経験者は口をそろえるでしょう。

海外出稼ぎは「稼ぎ」と「経験」の両面で魅力があります。稼げる国、という視点で見ると、オーストラリアやカナダ、ニュージーランドは有力候補です。

ただし、実際に手元に残る金額は、現地での生活費や税金によっても変わります。

また、仕事に関しても、日本国内のような安定感を望むのは難しいでしょう。仕事が見つからず、貯蓄が底をつき、帰るに帰れない・・・、そんな可能性もゼロではありません。

メリットを存分に生かすには、しっかりとしたデメリット対策をしましょう。

海外で働くことは、単にお金を稼ぐ以上の価値があります。異文化の中で得られる経験や広がる視野は、今後のキャリアにも大きなプラスになるでしょう。為替や現地の情報をしっかり把握し、準備を整えて挑戦すれば、「稼ぎ」と「成長」の両方を手に入れるチャンスになります。

世界経済に目を向けると、米トランプ大統領の繰り出す関税政策で、市場は荒れています。今後も、世界が予想しなかったような政策によって、市場が混乱するかもしれません。

為替は大きく変動し、オーストラリアドル、カナダドル、ニュージーランドドルはもちろん、他の通貨であっても、日本円との為替レートの推移によっては、想定通りの為替差益は受けられない可能性があります。

これから海外への出稼ぎを考えるなら、「為替のメリットを生かしてたくさん稼ごう」と思うより、「海外で働いた経験を今後の人生に生かそう」と、将来への投資と考えて取り組んだほうが確実かもしれません。

タケイ 啓子(たけい・けいこ)
ファイナンシャルプランナー(AFP)

36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー。

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