節電だけでは限界がある——電気料金の値上がりが続く理由と、家計を守る資産形成の考え方
電気料金の値上がりが気になっている人は多いだろう。しかし残念ながら、電気料金が今後値下がりする可能性は低いのが実情だ。背景には、円安による燃料費の高騰や再生可能エネルギー発電促進賦課金の上昇など、個人の努力だけではどうにもならない構造的な要因がある。本稿ではまず電気料金の決まり方と今後の見通しを解説したうえで、セット割やプラン見直しといった身近な節約術を紹介する。そのうえで、インフレ時代に家計を守るために欠かせない、NISA・iDeCo・不動産投資・金(ゴールド)といった資産形成の選択肢を整理する。
電気料金はどう決まる?基本料金・電力量料金・再エネ賦課金の仕組み
そもそも電気料金はどのように決まるのか、まず、電気料金の決まり方を解説します。
電気料金は、大きく分けて基本料金・電力量料金・再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の3つの合計額で決まっています。
●基本料金
基本料金は、電力会社に支払う「契約料」のようなもの。電気を使う・使わないに関わらず毎月一定額を支払います。
基本料金は、契約アンペア(A)数に応じて決まるのが一般的です。契約アンペア数が多いほど一度に大量の電力を使用できますが、そのぶん基本料金が高くなります。たとえば東京電力の基本料金(従量電灯B)は以下のようになっています。
<東京電力の契約アンペア数ごとの基本料金(従量電灯B)>
電気料金これからどうなる?家計を守るために必要な資産形成

参照:東京電力のウェブサイトより(株)Money&You作成
●電力量料金
電力量料金は、実際に使用した電気代です。「電力量料金単価×1か月の使用電力量」で算出されます。電力量料金の単価はプランによって異なります。東京電力の電力量料金(従量電灯B)は以下のように、1kWh(キロワットアワー)あたりの単価が使用した量に応じて3段階で設定されています。
<東京電力の電力量料金(従量電灯B)>

参照:東京電力のウェブサイトより(株)Money&You作成
このほか、電力量料金には「燃料費調整額」が足されたり引かれたりします。日本の電力の大部分は火力発電に頼っていて、発電のために必要な燃料のほとんどを輸入しています。燃料代は市場の動向や為替レートなどによって変動します。この価格変動を電気代に反映させるのが燃料費調整額です。燃料費調整額は、燃料費が値上がりした月は加算され、値下がりした月は差し引かれます。
●再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)
電気料金には再生可能エネルギー発電促進賦課金も加算されます。略して「再エネ賦課金」と呼ばれています。「再生可能エネルギー」とは、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといったエネルギーのこと。温室効果ガスを排出せず、国内で生産できるメリットがあることから、普及が進められています。
再エネで発電された電気は電力会社が一定期間、一定の価格で買い取ります。そして、その買い取りにかかった費用を電気の利用者である私たちが支払い、電力会社を経由して国の指定機関に納めています。2026年5月分〜2027年4月分までの再生可能エネルギー発電促進賦課金は1kWhあたり4.18円となっています。
電気料金は今後値下がりする?円安・燃料高から見る今後の見通し
東京電力が毎月示している「平均モデル」の電気料金(従量電灯B・30A、使用電力量260kWh/月、再生可能エネルギー発電促進賦課金、消費税等相当額を含む)の推移をみると、次のようになっています。
<平均モデルの電気料金(2020年1月〜2026年7月)>

参照:東京電力「燃料費調整のお知らせ」より(株)Money&You作成
2020年には7000円ほどだった電気料金は、2021年にやや下がったものの、2022年以降は大きく上昇しています。2023年2月からは国の「激変緩和措置」が適用されたおかげで一時的に下落しましたが、その後も上昇が続きます。途中、一時的に値下がりするのは後で紹介する電気料金の補助金制度が毎年夏や冬に行われてきたためです。
では、今後の電気代はどうなっていくのでしょうか。今後も落ち着く展開は考えにくいのが実情です。
ロシアのウクライナ侵攻、米国とイランの紛争などを背景に、燃料費が高騰しています。ホルムズ海峡を通過する石油は世界の石油消費量の約20%にあたります。日本に石油を届ける船舶の運航が滞れば、国内で利用できる石油が不足していきます。国内の石油が少なくなれば、日本の総発電電力量の約7割を担っている火力発電の燃料(原油やLNGなど)を確保するためのコストが上がります。その結果、発電コストの上昇が電気料金にダイレクトに転嫁されるため、電気代はますます高騰する可能性が高いでしょう。
また、円安も燃料費高騰に拍車をかけます。近年円安が進んでおり、本稿執筆時点(2026年7月13日)では1ドル=162円前後となっています。日本のエネルギー自給率は約15%程度。残りは海外から輸入しているので、円安になれば、電気料金の値上がりにも当然つながります。
再生可能エネルギー発電促進賦課金は2012年度の導入時には1kWhあたり0.22円でしたが、その後ほぼ一貫して上昇を続けています(2023年度のみ下落)。今後も再生可能エネルギー発電促進賦課金が値上がりすれば、電気料金の上昇につながります。
これらを踏まえると、電気料金は今後も中長期的に値上がりが続くと考えられます。
電気料金の補助金はいくら?2026年7〜9月の支援制度
高騰する電気料金に対して、政府はたびたび支援制度を講じてきました。2026年も7月1日から支援を実施しています。電力使用量が多くなることが見込まれる7月から9月の電気料金については、一般家庭(低圧)の場合、
- 2026年7月使用分・9月使用分…1kWhあたり3.5円
- 2026年8月使用分…1kWhあたり4.5円
電力量料金から差し引かれます。
仮に東京電力が示す平均モデルと同じく、毎月260kWh使用する世帯であれば、7月と9月はそれぞれ910円、8月は1170円電気料金が抑えられます。
とはいえ、補助金も限定的であり、補助金が終了したら電気代の値上がりに備えておく必要があります。
電気料金を節約するには?セット割・プラン見直し・節電の具体策
今後も電気代の上昇が続くことが予想されるのであれば、電気代を節約したいところです。電気料金は、個人の努力でもある程度減らせます。たとえば、次のような方法を試してみましょう。
●「セット割」を活用する
電気代は、電力会社を変えるだけで抑えられる場合があります。おすすめは、電気とガスを同じ会社から購入する「セット割」を活用することです。
たとえば東京ガス「基本プラン・ずっとも電気3」の場合、電気料金の基本料金と電力量料金の合計額(税込)の0.5%を割引と基本料金の275円(税込)割引が受けられます。また、関電ガス「なっトクプラン」ではガス料金が約7100円安くできる(大阪ガス「一般料金」との比較、ひと月あたり30㎡使用した場合)計算です。
●プランを見直す
お住まいがセット割の対象地域でなくても、契約プランを見直すことで電気料金が下げられるかもしれません。普段利用している電力量や電気を利用する時間などでもお得なプランが変わってくるので、見直しは「エネチェンジ」などの電気料金比較サイトを確認してから行いましょう。
●契約アンペア数を下げる
電気料金は契約アンペアを下げることで基本料金を下げることが可能。東京電力の場合、契約アンペアが50Aだと月1558円ですが、40Aにすると月1247円ですので、毎月311円・年3732円の節約ができます。ただし、アンペアを下げすぎるとブレーカーが落ちやすくなるので、普段の電力利用状況を基に判断しましょう。
●無駄遣いをしない
東京都「家庭の省エネハンドブック2026」には、具体的な節電対策とそれによって得られる年間の節約金額の例が紹介されています。なかでも気軽にできて効果がありそうなものには、次のようなものがあります。
- エアコンのフィルターをこまめに掃除する(冷房・月2回程度)…年1060円
- パソコン(デスクトップ)を使う時間を1日1時間減らす…年1050円
- 電気カーペット(3畳用)の設定温度を強→中にする…年6180円
- 冷蔵庫は設定温度を「中」や「弱」にするなど適切に調整する (食品の傷みには注意)…年2050円
- 白熱電球をLEDランプに交換する…年3090円
- 電気ポットの長時間保温はしない…年3570円
- 使わないときは、電気便座のふたを閉める…年1160円
無理なくできるものを積極的に取り入れて節約していきましょう。
インフレから家計を守るには?NISA・iDeCo・不動産投資・金という選択肢
電気料金は個人でもある程度は節約できます。しかし、値上がりの背景には政治・経済・国際情勢が深く絡んでいます。個人ではどうしようもない要因で電気料金が値上がりしているのが実情なのです。
また、電気料金だけではなく、ありとあらゆるものの価格が高騰しています。インフレ時代に家計を守るには、インフレ率以上にお金を増やす「資産形成」を取り入れていくことが必要です。
具体的には、次のような制度・投資商品を活用するのがよいでしょう。
●NISA
NISAは、株や投資信託など、投資で得られる利益にかかる税金がずっとゼロにできるお得な制度です。NISAを利用すれば、日本に住む18歳以上の方なら誰でも、一生涯、運用益にかかる税金をゼロにしながら投資・運用ができます。
NISAでは毎年、積立投資のできる「つみたて投資枠」で120万円まで、積立投資だけでなく一括投資もできる「成長投資枠」で240万円まで投資できます。つみたて投資枠と成長投資枠は併用可能なため、年間で最大360万円の投資ができます。
これからはじめて投資を行うのであれば、つみたて投資枠を活用するのがおすすめです。つみたて投資枠では、投資の基本である「長期・積立・分散投資」が一般の方でも簡単に行うことができます。投資信託にコツコツ積立投資を行い、じっくり資産形成をしていきましょう。成長投資枠では国内外の個別株にも投資できます。配当金をたくさんもらえる「高配当株」には業績のよい銘柄が多くあります。配当はもちろん値上がり益も期待できます。
●iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)
iDeCoは毎月自分で拠出した掛金を運用して老後の「自分年金」を作る制度。iDeCoの運用成果は、原則として60歳以降に受け取ることができます。年金といえば、国民年金や厚生年金といった公的年金をイメージされる方が多いでしょう。iDeCoは、公的年金の上乗せ分を自分で作れる私的年金制度のひとつです。
iDeCoで支払う掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になるため、所得税や住民税を安くすることができます。2026年12月からは、毎月の掛金額上限が引き上げられ、加入できる年齢も「65歳未満」から「70歳未満」に引き上げられます。所得控除のメリットをより生かしやすくなります。
NISA同様、iDeCoで得られた利益には税金が一切かかりません。税金が引かれない分、お金を効率よく増やせます。NISAとiDeCoは併用できますので、資金に余裕があるならば併用して取り組むのがよいでしょう。
●不動産投資
不動産投資は、購入した物件を貸すことで家賃収入などの利益を得る投資です。不動産投資では、入居者がいれば、毎月一定額収入が安定的に得られます。また、物件やエリアによっては、値上がりした物件を売ることで売却益(キャピタルゲイン)を得ることもできます。
不動産投資のメリットは、他人のお金(他人資本)で投資ができることです。不動産投資では、銀行からローンを借りて物件を購入し、入居者から得られる家賃収入を元手に返済していきます。
不動産投資は、インフレになると、物件の価格や家賃も上がる期待ができます。またインフレはお金の価値が下落することでもありますので、ローンを組んだ時点よりもインフレが進めば、借入金が目減りすることになります。不動産投資は、物価が上昇する「インフレ」にも強い投資だといえます。
●金(ゴールド)
金投資は、貴金属の金に投資することです。金は世界中で、その価値がゼロになるとは考えにくい「実物資産」として扱われています。不動産と同様、インフレでお金の価値が下落するときにも値上がりする(インフレに強い)特徴があります。
金は実物資産であるがゆえに、昔から、政治、戦争、天災などの地政学的な問題や世界経済を揺るがすような事態が発生したときに、「資産の逃避先」として買われることが知られています。
金への投資は投資信託やETF(上場投資信託)を活用するのが手軽です。保有中のコストはかかりますが実物の金を買うよりも手数料は抑えられます。NISAの成長投資枠で購入すれば、値上がり益にかかる税金もゼロにできます。
燃料高騰や国の政策などの状況を踏まえると、今後電気料金が劇的に下がることは考えにくい今、電気料金を無理のない範囲で安くできる手立てを講じておくことは大切です。契約を見直して節約をするだけではなく、投資・資産形成で備えるという視点も取り入れていきましょう。
参考情報:
・金融庁|金融リテラシーの考え方
・金融庁|NISA・iDeCo制度
執筆:高山 一恵(たかやま かずえ)
(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー
(株)Money&You取締役。中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)など書籍110冊、累計200万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
X(旧Twitter)→@takayamakazue
電気代だけでなく、インフレ時代の家計全体をどう守るか、あわせて考えてみましょう。
- 資産の分散について考えよう
→ NISA・iDeCo・不動産投資・金をどう組み合わせるか考えたい方へ - iDeCo(イデコ)と不動産投資で節税しながら将来に備えよう
→ 記事内で紹介した不動産投資・iDeCoをもう少し詳しく知りたい方へ - NISAだけで大丈夫?
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