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従業員持株会は本当に得? メリットと注意点から考える賢い資産形成

勤め先の会社に「従業員持株会」が用意されている人もいるでしょう。入社時にガイダンスを受けて「自分の会社の株式が買える制度」くらいには理解してはいるものの、よくわからないからとスルーしていることもあるかもしれません。

従業員持株会には、従業員にも会社にもメリットがある一方で、注意すべき点もあります。

そこで本記事では、そもそも従業員持株会とはどのような制度なのかを確認したうえで、メリットと注意点を整理し、利用を検討すべき人の特徴を解説します。

そもそも従業員持株会とは?

従業員持株会は、会社の従業員が自社の株式を購入できる制度です。多くの上場企業などでは、福利厚生の一環として従業員持株会が用意されています。従業員持株会では、従業員同士で株式を共同購入することができます。

通常、株式を購入するときには、証券会社に口座(証券口座)を開設し、買いの注文を出して購入に必要なお金も事前に証券口座に入金しておく必要があります。その点、従業員持株会を利用すれば、証券口座を開設する必要もなく、給与や賞与から天引きで自社の株式を自動的に購入することができます。

東京証券取引所(東証)が2025年2月に公表した「2023年度従業員持株会状況調査結果」によると、2023年の調査対象3273社の従業員822.4万人のうち、従業員持株会の加入者は311.0万人となっています。従業員持株会の加入者は近年、増加傾向にあります。

<従業員持株会の加入者数(2019年〜2023年)>

東京証券取引所「2023年度従業員持株会状況調査結果」より(株)Money&You作成

出典:日本取引所グループ「従業員持株会状況調査」

従業員持株会のメリット

従業員持株会のメリットには、大きく分けて「従業員にとってのメリット」と「会社にとってのメリット」があります。

【従業員にとってのメリット】

1、少額から始められる

通常、株式は100株単位で売買します。近年は1株単位のサービスもだいぶ普及してきましたが、それでも基本は100株単位です。たとえば、株価が3000円の銘柄を購入するには30万円(+手数料)が必要です。

従業員持株会は、従業員同士で株式を共同購入するしくみなので、「現状の株価がいくらか」や「100株単位」といった購入単位などを気にせずに「毎月1000円」などの少額から一定額ずつ株式を購入できます。

SMBC日興証券のデータによると、従業員持株会に加入している人の毎月の投資額(持株会平均拠出額)は1万1131円。年間で13万円ほどを従業員持株会で投資しているとのことです。

2、資産形成に役立つ

自社株の購入とはいえ、れっきとした株式投資です。株式に投資することで従業員の資産形成に役立ちます。東証のデータによると、従業員持株会の加入者1人当たりの平均株式保有金額は2023年時点で282.4万円。2022年までよりも金額が大きく増えています。

<従業員持株会の1人当たりの平均株式保有金額(2019年〜2023年)>

東京証券取引所「2023年度従業員持株会状況調査結果」より(株)Money&You作成

出典:日本取引所グループ「従業員持株会状況調査」

2023年以降、市場は短期的な下落こそありますが全体的には右肩上がりです。その影響もあってか、株式保有金額が増加しています。

SMBC日興証券のデータによると、2015年4月から2025年3月末までの10年間にわたって従業員持株会を利用した場合、利益が出た割合は77.8%と試算されています。

従業員持株会では給与や賞与から天引きで株式を少しずつ購入するので、従業員持株会を利用しておけば堅実にお金が貯められます。従業員持株会の株式から得られた配当金は再投資されることが多いため、複利効果を活用して効率よく増やす期待もできます。

従業員持株会での投資は自動的に一定額ずつ買い付ける積立投資ですので、株価が高いときには少なく買い、安いときには多く買うことで平均購入単価を下げる「ドルコスト平均法」の効果も得られます。ドルコスト平均法を生かしていれば、株価の一時的な値下がりはむしろ多く買い付けるチャンスに。再び値上がりしたときに利益を出しやすくなります。

3、奨励金がもらえてお得に株式が買える

ほとんどの従業員持株会では、自社株を購入するときに「奨励金」がもらえるため、自分で株式を買うよりもお得に購入できます。

たとえば、投資額の10%がもらえる会社の従業員持株会で毎月1万円ずつ自社株を購入する場合、毎月1万円+奨励金1000円=1万1000円分の株式を購入できます。1万円で自社株を買うと、株価の動向関係なしにいきなり1000円お得になります。

奨励金の金額は企業により異なりますが、投資額の5%〜10%が一般的です。東証のデータによると、奨励金の金額が10%の会社(厳密には、1000円の拠出金につき支給される奨励金額が100円〜110円の会社)が約4割。ついで5%の会社が約3割となっています。100%以上の会社(1000円の拠出金につき支給される奨励金額が1000円以上会社)も16社あり、そのなかには300%の会社(1000円の拠出金につき支給される奨励金額が3000円〜3010円の会社)も1社あります。1000円出すと4000円分の株式が購入できる計算ですから、奨励金の補助が大きいことがわかります。

4、業績がよければ資産がより増える

業績のよい銘柄の株価は上がる傾向にあります。従業員として努力し、業績が良くなったとなれば、株価もアップして配当金がもらえることもありえます。結果として、自分の資産が増えることにつながります。

自社の業績がアップすれば、自分の給与やボーナスも増えるかもしれません。そうなれば、給与・ボーナス増加+株価上昇+配当増加という好循環につながります。仕事もよりがんばろうと思えるはずです。

会社によっては、社員の大部分が従業員持株会に加入しているところもあります。

5、インサイダー取引にならない

インサイダー取引とは、企業の内部事情を知っている役員や従業員などが、株価に影響のある重要な情報が公開される前に株式を売買して利益を得たり、損失を防いだりする取引のことです。インサイダー取引は、株式の公正な取引をできなくするものとして法律で厳しく禁止されているため、上場企業の従業員などは自社の株の売買が制限されています。

従業員持株会は、従業員があくまで「定期的に」株式を購入するための制度ですので、インサイダー取引の適用外になっています。

6、未上場企業の場合、上場すれば大幅な株価上昇も

従業員持株会の制度は、未上場企業でも実施されている場合があります。上場するときには、株価が大きく上昇することがよくあります。未上場企業が今後必ず上場を果たすとは限りませんが、仮に上場し、自社の株価が大きく値上がりすることがあれば、大きな利益を得られる可能性があります。

【会社にとってのメリット】

1、安定株主が得られる

安定株主とは、会社の業績や株価などに左右されず、長期間にわたってその会社の株式を持ち続けてくれる株主のことです。

株式投資である以上、一般の投資家であれば業績が悪化したときなどに売られ、株価がいっそう下落してしまうこともあります。その点従業員持株会では、従業員が毎月継続して自社株を買い付けるため、株価が下支えされます。実際、会社が公表している大株主の一覧に従業員持株会の名前が見られることもよくあります。

2、会社の福利厚生をアピールできる

従業員持株会は、従業員に資産形成を促す福利厚生の制度でもあります。お金を貯めたい、増やしたいというニーズは常にあります。福利厚生の一環として従業員持株会に力を入れていることが、社員満足や優秀な人材の確保につながることも考えられます。

3、社員の経営参加意識が高まり、金融リテラシーも向上する

従業員が株主となることで「企業の業績が直接的に自分の利益につながる」ことを実感できるようになります。企業の業績や成長を自分ごととしてとらえられる社員が増えれば、組織はより強いものになるでしょう。

また、株式を保有していると、日々のニュースや株価の動向が気になるようになるものです。株式を保有することによって金融リテラシーが向上する期待もできます

従業員持株会の注意点

一方、従業員持株会には注意すべき点もあります。

1、業績が悪ければ資産が減るリスクがある

いくら従業員持株会で奨励金をもらいながら投資ができるといっても、必ずしも資産が増えるとは限りません。自社の業績が悪化したなど、なんらかの理由で株価が下がってしまうこともあるでしょう。そうなれば、配当金も減ったりなくなったりする可能性があります。先に紹介したSMBC日興証券の「利益が出た割合が77.8%」も、裏を返せば「利益が出なかった割合が22.2%」ですから、必ず儲かるとは限りません。

業績が悪くなれば、給与が減ったりボーナスがもらえなくなったりすることもあります。最悪の場合、会社が倒産するなどということがあれば、株式は無価値になりますし、今後の給与や仕事まで失うことだって考えられます。資産が自社に集中してしまうというリスクがあることを押さえておきましょう。

2、従業員持株会の配当金や奨励金は課税の対象になる

従業員持株会ではNISAやiDeCoといった非課税の制度を利用できません。株式を保有することでもらえる配当金や会社からもらえる奨励金、さらには将来株を売ったときの売却益には税金がかかります。

3、従業員持株会では株主優待はもらえない

株主優待は、株主に対して送られるプレゼントのようなもの。一定以上(ほとんどは100株以上)の株式を保有する株主に、自社製品やサービスの無料券、金券などをプレゼントする制度です。

株主優待は、株主優待自体を目的に投資する人がいるくらい人気の制度ですが、従業員持株会では株主優待はもらえません。従業員持株会を通じて保有する株式は、持株会(組合)の名義で保有されるためです。企業が個人株主向けに用意している株主優待の対象外となります。

4、従業員持株会の株式はすぐに売却・換金できない

従業員持株会で保有する株式は、市場ですぐに売却できません。 現金化するには、従業員持株会で手続きを行い、保有する株式を自身の証券口座に移管する手続きが必要です。このときNISA口座には移管できず、課税口座(特定口座または一般口座)に移管を行います。移管が終わったら、その証券口座で売却手続きを行います。

一連の手続きには数週間かかる場合もあるため、たとえば「今株価が高いから売りたい」「まとまったお金が必要になったから売りたい」と思ってもすぐには売れません。

5、未上場の場合、上場しない可能性もある

未上場の会社の場合、結局上場しない可能性もあります。いくら株式があったとしても、上場しないのであれば売却がしにくくなってしまいます。未上場の株でも換金はできるのですが、そもそもの市場価格がないため、会社が独自に定めたルールで換金することになり複雑です。会社の業績悪化時には、会社側に買い取る資金がない、あるいは法律上の制限で買い取れない事態も起こりえます。また、上場したとしても、必ず値上がりするという保証はありません。

従業員持株会は利用した方がいい?

従業員持株会には確かにメリットがあるのですが、デメリットの面も軽視できません。従業員持株会は、デメリットを知ったうえでほどほどに使うのがよいと考えます。

特に、人的資本と金融資本の双方が会社依存になってしまう点には注意が必要です。給与減+株価下落+配当減少(あるいは無配)のトリプルパンチを喰らう可能性も、ないとはいえないからです。

資産の集中を防ぐには、長期・積立・分散投資がやはり王道です。従業員持株会の利用は一部にとどめ、残りは投資信託や他の株といった、自社株とは違う資産に分散しておけば、自社に万が一のことがあってもお金を大きく減らす事態は避けられます。

従業員持株会では利用できないNISAやiDeCoといったお得な制度を利用することも大切。どちらも運用益が非課税にできますし、iDeCoは掛金を全額所得控除できるので毎年の所得税や住民税を安くすることができます。

従業員持株会のメリットを活用しつつも、デメリットにも注意しながら、自分にとって最適な資産形成ができるようにしていきましょう。

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頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント

Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。
日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊超、累計190万部。
日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。

X→ @yorifujitaiki

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