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会社員の副業の「経費」。確定申告で税金は安くなる?

人生100年時代において、副業は収入源の多様化として広がっています。しかし重要なのは収入額ではなく、税務や経費の考え方を理解するリテラシーです。20万円ルールや家事按分、経費の判断基準を正しく理解することは、長期的な資産形成の基盤となります。制度理解を深め、自ら判断できる力を養うことこそが、持続可能なライフデザインにつながります。

副業の所得が20万円を超えていたら確定申告が必要

最近は、収入を増やしたい、スキルアップしたいなど、会社員でも副業をする人が増えてきました。

会社員の場合、本業の収入は年末調整があるので確定申告は原則不要です。しかし、副業の収入は年末調整では手続きできません。ですから、副業をしている会社員は、確定申告が必要です。具体的には次のような方が該当します。

⚫️1か所から給与の支払を受けていて、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える人
→副業の所得が20万円を超えていたら確定申告が必要です。「20万円ルール」などと呼ばれることもあります。

⚫️2か所以上から給与の支払を受けていて、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得・退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
→2つ以上の会社で給与をもらった場合、年末調整ができるのは1か所だけです。その他の会社の給与の収入金額と副業の所得の合計が20万円を超えていたら確定申告が必要です。

副業の「所得」とは、収入から経費を引いた金額です。たとえば、副業の収入が30万円あっても、経費が20万円かかっていれば、所得は10万円ですから、確定申告はしなくてもいいことになります。

ただし、「所得税の確定申告」が不要なだけで、住民税については別途申告が必要なことには注意が必要です。

そもそも所得は、全部で10種類あります。利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得です。

副業の所得は多くの場合、「雑所得」または「事業所得」になります。

雑所得は、他の9種類の所得に当てはまらない所得です。たとえば、会社員が単発で本を書いて原稿料を得たという場合は通常、雑所得として扱われます。

事業所得は、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の「事業」で得られた所得です。事業所得として認められるかは、事業と呼べる程度で行われているかで判定されます。たとえば、営利性(稼ぐ目的で行うこと)・継続性(連続して仕事をすること)・独立性(自分の裁量で仕事ができること)などが必要です。先の会社員が月刊誌などで継続的に連載しているとなれば、事業所得と認められる可能性が高いでしょう。

経費にできる費用にはどんなものがある?

副業の所得を算出する際、多くの人がつまずきやすいのが「どこまで経費として認められるのか」という点です。そもそも経費とは、「副業で収入を得るために必要だった支出のことを指します。

たとえば、次のような費用は経費にできます。

⚫️消耗品費:
パソコンやiPad、周辺機器、アプリなど、作業をする上で必要な道具は消耗品として経費にすることができます。パソコンやiPad も10万円未満のものは消耗品費となります。

⚫️交通費:
副業の作業や取材、商品を仕入れるために必要だった移動による公共交通機関の交通費は経費にすることができます。Suicaなど交通系ICのチャージ残高から支払った乗車賃も対象です。

●交際費:
食事する、ゴルフに行くなど、取引先をもてなして副業をしやすくする交際費は経費として認められます。もちろん、私的な食事やゴルフなどは経費になりません。

⚫️研修費:
副業をする上でスキルアップを図るためなど、仕事に関連するセミナーの受講費は経費になります。一方で、明らかに仕事に不必要な資格を取るためのセミナーの受講費などは対象になりません。

⚫️新聞図書費:
副業を行う上で必要な情報収集のために購読する新聞、書籍、雑誌などの費用は経費になります。マンガや小説など、娯楽用の図書は対象外です。

⚫️支払い手数料:
フリマや物販などで、プラットフォームを利用する際に発生する手数料は、直接収入に関係する支出として経費にすることができます。

⚫️外注費:
外部の個人や法人に対して、業務の一部を委託する際に発生する費用は経費になります。

副業の経費で迷いやすい家事按分とは

副業のなかには、自宅でネットを使って行うものもあります。このとき、自宅やネットは副業で使いますが、プライベートでも使いますよね。こうした、仕事とプライベートの両方で使っている支出については「家事按分」といって、仕事で使っている割合だけを経費にすることができます。

家事按分の計算方法には、「客観性」と「合理性」が求められます。基本的には「面積」「使用時間」「使用回数」を根拠に按分します。

たとえば、床面積が50平方メートルの家に月10万円の家賃で住んでいる人が、そのうちの半分、25平方メートル分を副業の仕事部屋として使っているならば、5万円(10万円×50%)を経費にできます。

また、自宅のネット代が月5000円で、利用時間の約6割が副業によるものならば、3000円(5000円×60%)を経費にできます。

副業の経費とするには、その支出が副業の支出だと判断できる必要があります。副業のためにお金を使ったら、領収書やレシートを必ずとっておきましょう。副業で使っている割合や時間など合理的に説明できれば、その分は経費にできます。

副業の確定申告をするときに、領収書やレシートを一緒に提出する必要はありません。しかし、領収書やレシートなどは、原則7年間(書類によっては5年間)保存することが法律で義務付けられています。税務署から聞かれた場合には、速やかに提出しなくてはなりません。「保存していなかった」「なくした」となると、経費として認められなくなる可能性がありますので、注意しましょう。

これは経費になる?ならない?

確定申告では、売上金額から経費を差し引いて利益(所得)を計算し、この利益を元に税金を計算します。つまり、売上金額に対して経費が多いほど利益(所得)が小さくなり、税金を減らすことにつながります。しかし、だからといってあれもこれもと経費を入れすぎると、税務署の指摘を受けることになりかねません。

ここでは経費になるかならないか、微妙なものの考え方を紹介します。なお、以下はあくまでひとつの解釈ですので、実際には経費が認められた(認められなかった)ということもありえます。あらかじめご了承ください。

●カフェでの仕事代は経費になる?

会社員が個人でカフェを使い、副業の仕事をしたという場合は経費になります。しかし、カフェで食事をした場合、食事代は経費として認められません。食事はあくまで生活に必要なことであり、副業と直接は関係ないからです。カフェで仕事をして、途中でおなかが空いたからと軽食をとったという場合には、コーヒー代と食事代で領収書をわけてもらうとよいでしょう。

また、カフェで副業に関する打ち合わせや取材を行なったという場合も、経費にできます。一緒にカフェにいった相手のコーヒー代や食事代を出して接待したという場合も経費にできます。

●スーツ代は経費になる?

スーツ代が経費になるかも微妙なラインです。スーツは主に仕事で着る服ですが、たとえば結婚式などで着るとなれば、「副業のためだけに購入した」と証明できなくなってしまいますので、経費にできなくなります。普段からスーツを着て仕事をする士業の人や営業マンなどであれば経費にしやすいですが、私服で仕事をするライターなどの場合には経費にしにくいでしょう。

家事按分の考え方で「おおよそ10回に1回は私用で着る」というのであれば、90%分を経費にすることもできる可能性もあります。

●ネイル代は経費になる?

ネイル代をはじめとする美容費は、普段からの身だしなみを整えるための費用ですから、基本的には副業の経費にはできません。「ネイルを整えたり美容院に行ったりすると副業のやる気がでる」というレベルでは、副業の経費にするのは難しいでしょう。

しかし、ネイリストやモデル、あるいはYouTuberのように、身だしなみを整えることが売上を左右するような副業をしている場合には経費にできる可能性があります。あくまで副業のために必要ならば、経費にできる可能性が高いということです。

●ChatGPTの利用料金は経費になる?

AIの進歩がめざましい今、ChatGPTなどのサービスを利用している人も多いでしょう。調べものをしたり、プログラミングやマーケティングに活用したりと、何かと便利です。ChatGPTを副業で利用していれば、当然経費にできます。サブスクなどの利用料金も同様です。

●不動産投資の費用は経費になる?

不動産投資の収入は不動産所得になりますが、不動産所得も不動産収入から経費を差し引いて求めます。

不動産投資で家賃収入を得るまでにかかったさまざまな費用は、経費にできます。具体的には、「ローンの金利(利息部分のみ)」「税金(固定資産税・都市計画税・印紙税・登録免許税・不動産取得税など)」「不動産投資で使った通信費」「部屋や機材の修繕費」「火災保険料や地震保険料」「仲介手数料・支払手数料」「不動産投資に関わる交際費・交通費」「減価償却費」などがあります。副業で不動産投資をした際には、必ず経費を計上しましょう。

●SNS運用は経費になる?

SNSを運用することでかかった費用ももちろん経費にすることができます。投稿のコンテンツ作りにかかった費用だけでなく、SNSの勉強をするためにかかった書籍代なども経費にできます。あくまで副業と関係があり、領収書やレシートがきちんと保存されていることが経費の認められる条件となります。

経費が認められない場合はどうなる?

副業の経費を計上しても、すべて認められるとは限りません。税務調査などで「これは経費に当たらない」と判断されてしまうと、その認められなかった経費については自己負担になってしまいます。経費として認められなければ、所得から差し引くことができず、結果として課税所得が増えます。

本来納めるべき税額が増えた場合、「過少申告」と判断される可能性があります。過少申告と判断されれば、本来の税金の不足分だけでなく「過少申告加算税」が課されることがあります。

経費として認められなかった分の税金の納付は、本来の納付期限より遅れていることになります。そうすると、延滞税も発生します。延滞税は日数に応じて加算されるため、修正が遅れるほど負担が大きくなります。

そして副業で使っていない経費を計上したり、プライベートの支出を経費だといって計上していたりすると、悪質だと判断されて重加算税が課される可能性があります。重加算税は税率が35%(場合によっては40%)と非常に重いペナルティとなります。

経費が認められない場合、単に「節税できなかった」では終わりません。本来の税金だけでなく、追加の税金や重いペナルティが課されることになりかねません。収入を増やしたり、スキルアップしたりするというポジティブな動機で始めた副業で嫌な思いをしないようにするためにも、ごまかさず、嘘をつかずに正しく副業の経費を計上するようにしましょう。

副業の経費になるかどうか判断に迷った場合には、税務署に問い合わせるなどして、きちんと確認するようにしましょう。

執筆:高山 一恵(たかやま かずえ)
(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー

(株)Money&You取締役。中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)など書籍100冊、累計190万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

X:@takayamakazue

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