
地価14.5%上昇の理由──再開発で変貌する浜松町・芝浦の今と未来
歴史ある港町・芝浦と浜松町が、いま大規模再開発で進化を遂げています。レインボーブリッジや東京ポートシティ竹芝、「ブルーフロント芝浦」など、次々と新たなランドマークが誕生。地価上昇率14.5%という実績が示すように、湾岸エリアは投資価値の高まりが顕著です。
本コラムでは、東京サウスエリアの歴史的背景から最新の再開発、そして将来的な資産性まで、投資家の視点から読み解きます。
芝浦・浜松町の歴史
芝浦など山手線・京浜東北線の東側は江戸時代に遡ると海でした。港区の資料によると芝浦という地名は古く1486年の書物には見られたそうです。芝の村の浦(海)という意味で芝の浦と呼ばれ、それが芝浦となったそうです。浜松町の駅が開業したのは1909年ですが、その当時も駅の近くは海があり潮干狩りなどの客も多かったそうです。
その後このエリアは明治末期から昭和初期にかけて行われた隅田川口改良工事で生じた土砂により埋立てが行われました。芝浦というと日曜日の夕方にアニメ番組のスポンサーを務めていた「東芝(旧東京芝浦電気)」が有名ではないでしょうか。
浜松町は1696年に浜松出身の方が名主になり浜松町と名乗るようになったそうです。
湾岸エリアは近年は港に近い立地から倉庫街となっていましたが1990年代には「東京ベイエリア」として知名度も上がりました。
さらに1993年には芝浦と台場を結ぶ「レインボーブリッジ」が完成し、芝浦からはちょうど「東京タワー」と「レインボーブリッジ」の両方がよく見える立地です。
さらに1995年には「ゆりかもめ」が開業し湾岸エリアが大きく注目を集めました。
多くのタワーマンションが出現
2000年代に入って湾岸の大型の企業跡地などに大型タワーマンションが多く建設されるようになりました。
そのはしりとなったのが都市再生機構(UR)と三井不動産などのJVで行われた「芝浦アイランド」プロジェクトです。筆者は2006年に「芝浦アイランド グローブタワー」の発売に伴い、三井不動産さんの招きで「都心大規模物件の資産性」という内容でマンションギャラリーにて講演をさせて頂きました。物件の人気も高く、あまりにもお客様が来過ぎて臨時のセミナーも組み入れた程でした。
当時は東京の地価も下落から上昇へと反転し、特に都心の地価上昇率は高く港区の住宅地では24%、商業地で19.6%と非常に高い上昇率となっていました。また東京駅前では「新丸ビル」が建設されており都心部の再開発も進んでいた時期です。
このマンションの発売を契機に湾岸エリアのタワーマンションも多くなってきました。
オフィス街として発展してきた田町・浜松町
浜松町駅は都心三区の一つである港区内にある山手線の駅であり、その希少性も高いと言えます。ちなみに港区にある山手線の駅は5つで新橋、浜松町、田町、高輪ゲートウェイ、品川駅です。品川駅はなぜか品川区ではなく港区にあります。
こうしたエリアでは交通利便性も高く多くのオフィスビルなどの集積するビジネスエリアとなっています。
2030年台前半に開業を予定しているリニア中央新幹線の品川駅や東京駅などへもアクセスしやすい立地で急激に開発が進んでいます。
近年では浜松町駅周辺で大規模なオフィスビルの建替えや新たなプロジェクトなども進行しているので見てみましょう。
旧芝離宮恩賜公園の海側には「東京ポートシティ竹芝」が開業
浜松町駅の東側の湾岸エリア、旧芝離宮恩賜公園の東に2020年にひときわ大きなビル「東京ポートシティ竹芝」が開業しました。地上40階の「オフィスタワー」を中心に商業施設やなんと水田や養蜂などの農業施設「竹芝新八景」など環境共生のコンセプトのあるビルです。
浜松町駅から500mの歩行者デッキも建設され、ソフトバンクの本社が移転するなど話題になっています。歩道は地上15mの高さで高速道路の上を歩いて渡り、浜松町駅からゆりかもめ竹芝駅や竹芝ふ頭などを結びます。
東口駅前には「ブルーフロント芝浦」
浜松町駅の東側「旧芝離宮恩賜庭園」の隣に、かつて東芝の本社のあった「浜松町ビルディング(旧東芝ビルディング)」の建替えである「ブルーフロント芝浦」のプロジェクトが進行しています。
地上43階建ての「タワーS」と地上45階建ての「タワーN」のツインタワーが建設されます。浜松町駅から植栽のある歩道「GREEN WALK」でつながります。
まず「タワー S」は2025年に開業します。高層階にはラグジュアリーホテル「フェアモント東京」が7月に開業、以降オフィスが8月に、商業施設が9月と順次開業します。
東京は世界に誇る街ですが、不足している典型的な施設の一つが高級ブランドホテルです。ちなみにブランドホテルの出現は西新宿のパークハイアット東京、品川駅港南口のストリングスホテルなどエリアのブランドバリューを押し上げ地価・マンション価格などにも影響を与える事になります。
デベロッパーでもある野村不動産グループの本社も集結します。また今後は「タワーN」が2030年度に竣工を予定しています。
東京湾に臨む高層のビルは、海への展望も良く28階にスカイラウンジが設けられており1フロアがすべて共用施設となっているそうです。テラスにはデッキチェアもありゆったりとくつろぐ事ができそうです。通常のオフィスと異なり自然の風を感じながら開放的な環境の中で仕事をする事で新たな発想や新しい企画なども生まれやすいのではないでしょうか。近い位置にある日の出ふ頭小型船ターミナル「Hi-NODE(ハイノード)」からは小型クルーズ船によるクルーズもできるそうです。まさに湾岸エリアの利点を生かした最新のオフィスのようです。
こうした再開発の影響もあり、周辺の地価はゆりかもめ「竹芝」駅にも近い「港区湾岸1丁目」のエリアでは2025年の公示地価では14.5%もの上昇となりました。
今後も芝浦を始め湾岸エリアがオフィス街やタワー・コンパクトマンションの立地としてますます発展する可能性も感じます。

「浜松町西口地区」再開発では「世界貿易センタービル」の建替え工事など
浜松町西口駅前では都市再生特別地区の指定を受け大規模な再開発が進み、大きな変貌を遂げています。
<A街区>では、かつて駅前に大きくそびえ立ち、ひと際目立っていた「世界貿易センタービル」の建替えプロジェクトが進行しています。かつての世界貿易センタービルは1970年に竣工しまし、152mの高さがあり完成当時は東洋一の高さのビルと言われていました。
すでに南館は2021年に38階の高層オフィスビルとして開業しています。今後は本館が46階建ての大型オフィスビル2027年3月開業予定です。本館の上層階には日本初進出となるラグジュアリーホテル「ラッフルズ東京」が開業します。また国際会議に対応可能なカンファレンス施設も開業し、MICE(※)需要も狙う効果もあります。
<B街区>では地上29階建てのビル「日本生命浜松町クレアタワー」が2018年に完成、
<C街区>では46階建て高層ビルなどが2026年12⽉に竣工予定です。
またモノレール駅の建替えも行われています。
浜松町駅西口は駅前に多くの高層ビルが建ち並ぶ、丸の内や大手町のようなオフィス街と変わって行くと考えられますので、就業人口の大幅な増加も予想されます。

株式会社世界貿易センタービルディング他
(※)MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語で、これらのビジネスイベントの総称
浜松町駅を中心に3つの再開発エリアが結ばれる
浜松町駅では「東京ポートシティ竹芝」に続く歩道に連なる「北口東西自由通路」により「東京ポートシティ竹芝」と西口が繋がり、さらに「南口東西自由通路」により「ブルーフロント芝浦」と西口が繋がります。さら線路沿いに「GREEN WALK」が「ブルーフロント芝浦」から「北口東西自由通路」までつながる予定もあり、この3つの再開発エリアは一体となって発展する事も期待されます。
高輪ゲートウェイ駅前の「高輪ゲートウェイシティ」の開業や「リニア中央新幹線」の開業予定の品川駅などにも近く、利便性の高さから今後も発展が期待できます。
今後も東京サウスエリアは進化が続きこれらのエリアから利用できる山手線・京浜東北線、都営浅草線、大江戸線、東京モノレール、ゆりかもめなどによって広域商圏を形成します。という事は幅広いエリアからワンルームマンションを始め法人賃貸を中心に賃貸需要が見込まれ、不動産投資業界にとっても大きな恩恵を受ける開発プロジェクトと位置づけられます。