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貯蓄と経験・をバランスで表したイメージ

FIRE貧乏・NISA貧乏にならないために——「今の幸福度」を犠牲にしない資産形成の考え方

「将来のために」とFIRE(早期リタイア)やNISAでの投資に励むあまり、今の生活が苦しくなっていないだろうか。SNSでは「FIRE貧乏」「NISA貧乏」という言葉も話題になっており、実際の調査でも投資額が増える一方でお小遣いや趣味への支出が減っている実態がある。お金は将来のためだけでなく、使ってこそ価値がある。本稿ではFIRE・NISAを目指す人の生活満足度の実態データ、経験や思い出への投資の重要性を整理し、老後も安心してお金を使い続けるための「キャッシュフロー資産」という考え方を紹介する。

FIREを目指す人の生活満足度はどれくらい下がる?データで見る実態

FIREでは、資産運用で生活費をまかない、資産を減らさずに生活することを目指します。FIREでは、年間の生活費を投資元本の4%以内に抑えれば資産が目減りすることなく暮らせるという「4%ルール」が知られています。たとえば、年間の生活費が300万円なら、7,500万円用意して運用し、年4%の収入(=300万円)を用意すれば、資産を減らさずに生活ができると考えます。

合同会社WOZ(ウォズ)がFIREを目指す20代〜40代の会社員約1,000人を対象に調査した「FIRE達成のための目標金額と資産形成の実態」によると、理想のFIRE達成目標金額は「1億円〜2億円未満」とする回答がもっとも多く、31%ありました。

<理想のFIRE達成目標資産額/FIRE達成までの期間>

参照:WOZ「FIRE達成のための目標金額と資産形成の実態」より

FIRE達成までの期間を尋ねた質問では、「10〜20年未満」が最多で38.5%。20〜30年未満、30年以上も加えると、約7割の人がFIRE達成まで10年以上かかると考えていることがわかります。

FIREに必要な金額が増えれば、その準備に必要な期間も長くなります。普通に生活しながら1億円、2億円と貯めるのは大変なことでしょう。

FIREの資産を用意するために削減・我慢している出費を聞いた質問(複数回答)では「外食費」「旅行・レジャー費」「美容・ファッション費」「交際費」「趣味への投資」などが挙げられています。そして、FIREを目指すあまりに現在の生活の満足度が下がっていると感じることがある人が約6割います。

<削減・我慢している出費/生活の満足度>

参照:WOZ「FIRE達成のための目標金額と資産形成の実態」より

将来FIREを目指すこと自体は悪いわけではありませんが、FIREを目指すあまりに「FIRE貧乏」に陥ると、「今」の生活満足度が激減してしまう様子がわかります。

また、FIREでは昨今のインフレで生活費が上昇すれば、資産をその分多く取り崩す必要が生じます。仕事を辞めれば厚生年金に加入しないので、老後の年金も減ってしまいます。FIREを実現しても、お金の問題はついてまわることになります。

さらに、FIREを目指している間の生活が身についてしまい、FIRE後もお金を使うことに抵抗が出てしまう可能性もあります。FIREを目指す多くは、体験や思い出にお金を使うことが少ない傾向にあります。 

FIRE達成者の中には、「お金を使わなくても自分は幸せだ」という主張もSNS上で見受けられますが、果たして本当にそうなのかは考えたいところです。

お金は一定程度あることで心の安心にはつながりますが、お金は使うことで初めて自分の価値に置き換えられます。そうしたものにしっかりと使ったことがなければ、価値自体もわからないのではないでしょうか。

NISA貧乏とは?20代の投資額とお小遣いの変化から見る実態

NISAは年間に投資できる金額が最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)であり、2024年のNISA改正以降、利用者が拡大しています。

一方、SNSでは「NISA貧乏」という言葉が話題になっています。NISA貧乏とは、とくに若年層がNISAへの投資に資金を回しすぎて、かえって日常生活が苦しくなることを指します。将来への不安からNISAでの投資を急ぐあまり、今の生活をないがしろにしてしまうのです。SNSなどでは「毎年の非課税投資枠は最速で埋めないと損!」といった極端な内容も散見されます。こうした声に焦って投資をしてしまう人もいます。

SMBCコンシューマーファイナンスが毎年実施している「20代の金銭感覚についての意識調査」によると、20代の月々の平均投資額はNISA改正直前の2023年には2万3589円だったのに対し、2025年には2万9678円と、6000円以上増加しています。

一方で、毎月のお小遣いは3万7096円から3万2159円と5000円近く減少。趣味や遊びへの支出は1万9027円から1万6596円と、2000円以上減少しています。

同調査で「投資している」と回答した人に毎月の投資額を聞いた質問では、約半数が「1万円以下」ですが、3万円超〜10万円以下と答える人の割合は増加しています。特に「5万円超〜10万円以下」の割合は前回調査の2倍以上になっています。

<ひと月あたりの投資額は?>

参照:SMBCコンシューマーファイナンス「20代の金銭感覚についての意識調査」より

このデータだけで「NISA貧乏が増えている」とまでは言えませんが、毎月の投資額が増え、お小遣いや趣味・遊びへの支出が減っていることは事実であることがわかります。

人生の幸福度を左右するのはお金だけ?DIE WITH ZEROに学ぶ考え方

FIRE貧乏とNISA貧乏に共通しているのは、将来のお金を貯めようとするあまりに今の生活を犠牲にしすぎていることです。もちろん、お金はないよりあったほうが幸せですし、人生の選択肢を増やすためには、お金はたくさんあった方がいいというのも間違いではありません。しかし、お金は使ってこそ価値があるものだということを忘れてはいけません。

日本だけでなく世界中でベストセラーとなった『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著/ダイヤモンド社)は、若いうちにこそお金を経験や思い出のために使って「資産ゼロで死ぬ」ことを説いています。お金はあの世に持っていけませんから、できるだけ自分のために使い切ったほうが人生の幸福度が高まるという考え方です。

若いうちの経験は価値が高いですし、新しいことを楽しめる能力は、年齢とともに下がっていきます。経験にお金と時間を使うことは重要です。経験に投資することで自分の価値が高まり、将来生み出せるものが増えれば、年収も上がるでしょう。経験から得られる「思い出」が増えれば、自分の幸福度も複利効果のように増していきます。

●人生に大きな幸福をもたらすものは?

人生の幸福度を高めるものは、経験・思い出だけではありません。幸福度には、健康・人間関係・信頼関係も関わります。

マーケティング会社のイプソスが30か国を対象にした調査によると、もっとも大きな幸福をもたらすものの1位・2位は健康になっています。3位以下には、主に周りの人との関係をよくすることが挙げられています。

<もっとも大きな幸福をもたらすもの>

参照:Ipsos「Global Happiness 2022」より(株)Money&You作成

健康・人間関係・信頼関係を犠牲にしてまでお金を貯めるのでは本末転倒。幸福度を高めるためには、こうした非財務的要因(数字では測れない要素)も大切だとわかります。

老後も安心してお金を使うには?「キャッシュフロー資産」という考え方

経験や思い出にお金を使い、健康・人間関係・信頼関係を高めて「DIE WITH ZERO」ができれば理想的です。資産形成期に資産を徐々に増やし、退職後寿命を迎えるまでにすべて取り崩すイメージです。

<取り崩し期は寿命で資産ゼロにするのが理想>

(株)Money&You作成

しかし、寿命がいつかわからない以上、これを実践するのは難しいものがあります。お金を使いたいものがない、いつ大病するかわからないといった理由でお金を残しているうちに、寿命を迎えていると考えられます。内閣府の資料でも、資産取り崩し期を迎えているにも関わらず、80代を過ぎても資産を1〜2割ほどしか使えていないことが示されています。

資産をなるべく使い切るためには、やり方を変える必要があります。

<キャッシュフロー資産を取り入れる>

(株)Money&You作成

資産取り崩し期に入ったら、図のオレンジの部分のように、一生涯取り崩さない金額を決めます。そして、この金額を除いた緑の部分を自分の豊かな老後・経験・思い出に使っていきます。

オレンジの部分は、利息・配当金・分配金・家賃収入といったキャッシュフローが得られる資産(CF資産)に投資をします。具体的には、個人向け国債・米国債・REIT・高配当株・不動産などがあります。

お金は、キャッシュフローがあることで初めて安心して使えるものです。

現役時代は、堅実に一部を貯蓄していた人もいるでしょうし、あまり貯蓄せずに散財していた人もいるでしょうが、いずれにせよ「働いていれば毎月給与が入ってくる」という前提があるので、お金を安心して使うことができます。

退職して老後を迎えれば、年金がもらえるようになりますが、年金だけで生活できるほどもらえる人はまずいません。キャッシュフローが不足しているので、お金を安心して使えなくなってしまいます。

CF資産から定期的に配当金・分配金・利息・家賃収入が得られれば、安心して取り崩せるのではないでしょうか。

CF資産のおすすめは、不動産投資です。

不動産投資では、購入した不動産を他の人や会社に貸し出すことで毎月家賃収入というキャッシュフローを得ることができます。

不動産投資は通常、ローンを組んで物件を購入し、得られた家賃収入で返済を行うため、返済中の収入はないか、あってもごくわずかです。しかし、ローンの返済が終われば、家賃収入がそのまま収入になります。不動産は、ローン返済後に大きな助けとなります。

老後、年金に加えて毎月家賃収入が入ってくる状態ならば生活も安定しますし、キャッシュフローがあればその他の資産を取り崩して使いやすくなります。

筆者も取り崩さない資産は不動産に決めて、それ以外は寿命に向かって運用しながら取り崩したいと思っています。

投資と経験、どちらも大切にするにはどうすればいい?

将来に向けての投資、資産形成はもちろん大切ですが、幸福度を高めるためには経験・思い出も大切です。読者のみなさんが「FIRE貧乏」「NISA貧乏」に該当していると思うのであれば、今後は経験・思い出にもいくらか時間とお金を使っていくことをおすすめします。

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頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保のアフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。
日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊超、累計200万部。
日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。

X→ @yorifujitaiki

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