「働き続けるしかない」が辛くなる理由とは? “自分以外に働いてもらう”資産形成の考え方
新年度が始まり、環境の変化に慣れようと頑張っていた反動で、ゴールデンウィーク明けに「働くことが苦しい」と感じる人は少なくありません。いわゆる“五月病”は、単なる気分の問題ではなく、「収入を自分の労働だけに依存している不安」が背景にある可能性もあります。
将来への不安が強まる時代だからこそ重要なのは、「もっと頑張ること」ではなく、“自分が働いていない時間にも収入が生まれる仕組み”を少しずつ作る視点です。この記事では、長期・分散・積立投資や不動産投資を例に、若いうちから考えたい「レバレッジ型の資産形成」について、判断軸ベースで整理します。
「五月病」の深層心理
五月病は、正式な医学用語ではありませんが、5月ごろに見られる心身の不調を総称した言葉です。協会けんぽのウェブサイトでは、五月病の症状として次のものが挙げられています。
<五月病の症状>

五月病は、医学的には、「適応障害」「うつ病」「パーソナリティー障害」「発達障害」「パニック障害」「不眠症」といった病気と関連があるとされています。
五月病の症状を見ると「自分も五月病になったことがある」「あのとき五月病だったのかも」と思われるかもしれません。
五月病の原因は、生活リズムの変化やストレスなどにあります。春になり、生活環境が大きく変わると、何かと慣れないことも多く、生活リズムを崩してしまいがちです。知らず知らずのうちに抱えたストレスを解消しないままゴールデンウィークに突入し、緊張から解放されると、そこで心身の不調が生じます。
五月病は、新入社員や新生活を始めた人がなりやすいといわれていますが、誰でもなりえます。株式会社アイベック「「五月病」に関するアンケート調査」によると、約6割の人が五月病を経験したことがあると回答。五月病になった原因としては「人間関係の悩み」と「出社へのストレス」が多く挙げられていました。
同調査によると、五月病になった人の約8割が「2か月以内に回復した」と回答しています。主な原因は生活リズムの変化とストレスですから、十分な睡眠や休息をとって、ストレスを解消する方法を見つけることが大切です。放っておくと、うつ病などに発展する恐れもあります。症状が改善しないようであれば、早めの心療内科や精神科などの受診もよく勧められています。
自分以外に働いてもらう仕組みを作る
五月病になり、働く意欲がわかないときには、たとえ今の会社は嫌いではなくても「この仕事をずっと続けなければいけないの?」「定年まで働き続けるのは体力的・精神的に不安だ」と悩んでしまうかもしれません。そうはいっても生活するには何かとお金がかかります。安易に仕事を辞めることはできません。
そこで考えたいのが、自分以外に働いてもらう仕組みを作ることです。
いくらがんばったところで、1日に働ける時間はせいぜい8〜10時間しかありません。自分が働いて稼げる金額には限界があります。そうしたなかで手取りを増やすには、「レバレッジ(leverage)」の考え方が重要です。
投資用語として使われるレバレッジには「少ない金額で多額の資金を動かす」という意味がありますが、ビジネス英語におけるレバレッジは、「資源や強みを効果的に活用する」という意味でよく使われます。
自分が働いている時間以外や寝ている時間などにも、お金を稼いでくれるような仕事や資産を持っていれば、手取りを増やすことができます。
起業家、エンジェル投資家、インフルエンサー、作家として活躍、伝説の最成功者ともいわれているナヴァル・ラヴィカントさんのことが描かれた『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』(エリック・ジョーゲンソン著/サンマーク出版)では、寝ている間もお金を稼ぐ仕事・資産として次のものが挙げられています。
- ビジネスオーナー
- 本の著者(印税)
- 金融資産(株、投資信託、債券など)
- 不動産
- プログラマーやアプリ製作者(Webサービスやアプリ収入)
- ブロガー(アフィリエイトや広告収入)
- YouTuberや音声配信者(広告収入)
本業を持ちながらお金自身に働いてもらい、収入を増やすことができていれば、本業にも好影響があるでしょう。余裕をもって仕事に臨むことができます。仕事を続けながらお金を稼ぐ仕事・資産を持つことで、将来への不安を和らげることができます。
五月病がどうしても辛い、五月病をきっかけに体調を崩してしまったということもないとはいえません。そうした場合にも、本業とは別に収入があれば、一時的に会社を休んで給与が減ったとしてもすぐに生活に困る事態にはならないでしょう。
再現性高く取り組みやすいのは株や投資信託など金融資産への投資
自分以外に働いてもらう仕組みのなかでもっとも取り組みやすいのは、金融資産への投資でしょう。いきなりビジネスオーナーや本の著者、YouTuberになるのは大変ですが、金融資産への投資であれば今は100円からでも始められます。株・投資信託など、長期的な成長が期待できる金融資産への投資はインフレ対策にもなります。
お金を減らさずに堅実に増やす投資で大切な考え方が「長期」「分散」「積立」投資です。
●長期投資
長期投資は、20年超などと長い期間で投資を行うことを意味します。短期投資では、一時的な値動きの要因でお金を減らしてしまう可能性があります。しかし、長い期間で投資すれば、世界経済の成長とともに利益を得る期待ができます。
金融資産での資産形成は早く始めるほど有利。「複利効果(再投資効果)」を活用するのが鍵です。複利効果とは、利息や運用益が次の利息や運用益を生み出していくことです。
複利効果は、時間をかければかけるほど、お金が増えるスピードが増していきます。若いうちから、少額からでも良いので投資をスタートすることで、数十年後には一定の金融資産を築けている可能性が高くなります。そうなれば、仮に理想の年収に届いていなくても、生活への不安は軽減でき、将来のリスクに備えられるでしょう。
●積立投資
積立投資は、定期的に一定額ずつ投資をすることです。相場は上がったり下がったりが常です。そのため、積立投資を続けると、商品の価格が安いときにはたくさん買い、高いときには少ししか買わなくなるため、平均購入単価を下げることができます。これをドルコスト平均法といいます。平均購入単価が下がるほど、値上がりしたときに利益を出しやすくなります。相場下落時にはドルコスト平均法の効果により、平均購入単価を下げていくことができます。
積立投資は、買うタイミングを考えず淡々と続けることになりますので、感情に左右されることなく運用を続けることができることもメリットの1つです。
●分散投資
分散投資は、「値動きの異なる」資産に投資することです。こうすることで、ある商品が値下がりしても他の商品の値上がりでカバーすることができ、資産全体としての価格変動リスクを減らせるというわけです。たとえば、株式と債券、株式と金(ゴールド)は値動きが逆になることが知られています。両方を組み合わせて保有することで、資産全体の価格変動リスクを抑えながら、堅実なリターンを目指しやすくなります。
「長期」「分散」「積立」投資におすすめの金融商品は投資信託です。投資信託は、投資家から集めたお金を専門家(ファンドマネージャー)がまとめて運用してくれる商品です。運用で利益が出たら、投資した金額に応じた値上がり益や分配金をもらえます。
投資家から集めたお金は、株式・債券・不動産などさまざまな資産に投資されます。どの資産に投資するかは、投資信託ごとに異なります。ファンドマネージャーが、その投資信託の運用方針や市場の動きなどを踏まえて、何に投資するかを決めています。
通常、ひとつの投資信託は数十から数百もの投資先に投資します。仮に、個人が数十から数百もの投資先に投資をしようとすると、手間もお金もかかって大変です。しかし、投資信託を利用すれば、投資信託をひとつ買うだけで、数十から数百もの投資先に分散投資したのと同じような効果を得られます。
投資信託はNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用して購入するのがおすすめ。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISAやiDeCoを利用すれば利益にかかる税金がゼロにできます。iDeCoは60歳になるまで資産が引き出せませんが、毎月の掛金が全額所得控除できるので、所得税や住民税を安くする効果も得られます。
金融資産に不動産投資を加えると、老後の生活が盤石に
金融資産への投資に加えて取り組みたいのが不動産投資です。資産に不動産投資を加えると、老後の生活が盤石になります。
不動産投資を加えるメリットには、次のようなものがあります。
●暴落があっても安定した家賃収入が手に入る
不動産から得られる家賃収入は、簡単に減るものではありません。暴落したからといって、みんな引っ越してしまうわけではないからです。不動産投資をすることで、安定した家賃収入を手にすることができます。
●インフレに強い
不動産は実物資産。インフレによって値上がりする、インフレに強い資産だといえます。インフレが進めば賃金水準も上がり、家賃相場も少しずつ上昇していくのもメリットです。
●他人資本で投資ができる
不動産投資は通常、自分の信用力を活用して借り入れたローンで行います。つまり、他人資本で投資ができますので、レバレッジを活用した投資が可能です。自分のお金で投資するよりも、10馬力・20馬力になって資産形成ができるのが大きく、資産形成のスピードも増します。ローン返済が終わった不動産があれば、それを担保に借り入れも可能で新たな物件に追加で投資するという方法を取ることもできます。スタートすれば手出しが少ないため、株を中心とする資産形成と並行して進められます。
●老後の生活が安定する
不動産投資は、ローンの返済中は助けにはなりません。なぜなら、家賃収入の大半はローンの支払いにあてられてしまうからです。キャッシュフロー(家賃とローン返済額の差額)はよくてもわずかにプラスになる程度です。
しかし、ローン返済が終われば、家賃収入が丸ごと収入となります。一気にキャッシュフローがプラスになるため、安定した収入が手に入ります。老後は年金+家賃収入でキャッシュフローを厚くできます。
自分以外に働いてもらう仕組みを用意しよう
五月病は誰でもなりうる病気です。なってしまうのは辛いですが、辛いときにでもお金を稼いでくれる仕組みがあれば、一時的に仕事を休んだとしても心配が減ります。仕事を続けながらも、複数の収入源を用意しておけば、将来への不安が払拭できます。
株や投資信託など金融資産への投資や不動産投資といった、自分以外に働いてもらう投資の仕組みを用意して、手取りを増やしていきましょう。仕事をしながら投資も続け、収入源を複数にすることで、将来への不安が薄れ、仕事にも前向きに取り組めるようになるでしょう。
頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント
Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。
日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊超、累計190万部。
日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。
X→ @yorifujitaiki
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