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海外転勤でも安心!非居住者の不動産投資に必要な「納税管理人」と税務手続きのポイント

グローバル化が進む現代、外資系企業や商社、金融業界などで海外転勤となるケースが増えています。

実際、海外に在留する日本人は120万人を超え、その中には国内で不動産投資を行っている方も少なくありません。海外転勤時には、国内の不動産収益に対する税務手続きや管理体制の整備が重要です。特に「納税管理人」の選定は、非居住者となった投資家にとって不可欠なステップです。

本コラムでは、国税庁の資料をもとに、海外転勤時に不動産投資家が押さえておくべき税務・管理のポイントを詳しく解説します。

海外の在留邦人は120万人以上

日本企業のグローバルな展開により、外資系企業・商社・金融業界など海外へ転勤となる方も多くいらっしゃいます。

外務省が発表した「海外在留邦人数調査統計」によると、2024年10月1日現在の海外在留邦人は129万3,097人で、そのうち成人数は104万4,816人でした。

「長期滞在者」は71万2,713人、「永住者」は58万384人となっています。ちなみに国別では米国、都市別ではロサンゼルスが最も多くなっています。

これだけ多くの方が海外に在留していますので、その中には当然、日本国内でマンション投資をしている方も多くいらっしゃると考えられます。

こうした場合に日本で賃料収入に対する税金の手続きや納付が必要となります。海外で得られた給与所得などの税金はその国で課税されますが、国内の不動産収益などは国内で課税されます。

◼︎海外在留邦人数の国別ランキング

順位
1米国
2オーストラリア
3中国
4カナダ
5タイ
<外務省「海外在留邦人数調査統計」>

◼︎海外在留邦人数の都市別別ランキング

順位都市
1ロサンゼルス
2バンコク
3ニューヨーク
4上海
5シンガポール
<外務省「海外在留邦人数調査統計」>

「納税管理人」とは

日本の会社に勤務していて、1年以上海外に出張・転勤となると、日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の「非居住者」となります。

日本でマンション投資をしていて海外に転勤になり非居住者となった場合でも、賃料収入を得る事ができますが、この賃料収入は日本での確定申告が必要となる場合があります。

また海外在住でも所有する物件に対する固定資産税や都市計画税も納付の必要があります。本人は日本にいませんので、代りに納税手続き等を行ってくれる「納税管理人」が必要となります。

但し固定資産税などは、近年ではスマートホン決済アプリでもよいという自治体が増えているようです。納税管理人に届いたなどの納付書を写真で送ってもらいバーコードを読み取る事で海外から税金を納付する事も可能のようです。

<納税管理人の業務>
・所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、固定資産税、不動産取得税、住民税等の税務関係書類の収受・保管
・各種申告、納税の案内
・税務署、市区町村からの連絡等の対応
・税金等の代理納付など

納税管理人を定めた時は、その非居住者の管轄の税務署長に出国前に「納税管理人の選任届出書」を提出する事が大切です。すると税務署が発送する書類は、納税管理人あてに送付されます。確定申告書は非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。

また帰国して居住者となった場合は納税管理人の解任届出書を提出します。

納税管理人になる資格は

納税管理人は日本在住者でしたら家族や親族でなければいけないとか、税理士の資格を持っていないといけないとかの制限はありません。親族などに依頼している例も多いようですが、税金がからみますので、税理士さんに依頼するのが無難ではないかと考えます。

実際筆者が不動産会社に取材したところ、購入した不動産会社に提携税理士さんなどを紹介してもらい、一定の手数料を支払って納税管理人になってもらうケースが多いようです。

また納税管理人を選定していないで出国してしまうと、納税ができない事になりかねないので必ず依頼してから出国して下さい。

不動産の収入がある方以外でも、以下の方は確定申告の必要がある場合がありますので納税管理人を選定する必要があります。

  • 国内にある資産の運用または保有により生じる所得(源泉徴収されない取引)
  • 国内にある資産の譲渡により生じる所得
  • 国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく一時金

管理会社への連絡も大切

不動産投資をする場合は、賃貸入居者の賃料の管理や、入退去の際の各種手続きなどは賃貸管理会社に依頼する必要もあります。

また建物管理は管理組合を通じて管理会社に業務が委託される事が多いです。

多くの方は既にこうした賃貸を委託していると思いますが、その場合は各管理会社に海外転勤の旨を必ず伝えましょう。

家賃の源泉徴収は借りる方に納税義務

非居住者や外国法人から日本の不動産を借りて賃料を払う人で自分や親族などが居住する以外、または法人が借りる場合は、賃料の20.42%を源泉徴収して税務署に納めなければなりません。これは例えば法人賃貸や、事務所・店舗として借りる場合などです。

つまり賃料の79.58%を貸主に賃料として支払い、残りの20.42%を税務署に収めます。

源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として、支払った月の翌月10日までに納めなければなりません。納税の義務は「部屋を借りている方」となりますので注意が必要です。マンションを借りた方が自分で住む場合はもちろんこの必要はありません。

但し家賃保証などで貸主が不動産会社となる場合は、居住者の納税は不要となります。また不動産会社に賃貸管理を委託している場合は、不動産会社がこうした手続きを行いますので、海外転勤の際は必ず連絡をするようにしましょう。

損益通算は

不動産投資には、不動産投資の赤字部分を給与所得などから引く事でき、節税となる「損益通算」というメリットがあります。

賃貸マンションのオーナーが非居住者の場合は、給与所得が海外のため、納税も海外となりますので、国内の不動産所得との損益通算はできない事になります。

但し最も損益通算のメリットが大きいのは購入に関する諸費用などがかかる初年度ですので、翌年以降はそのメリットが少なくなり、損益通算できない事の影響も少なくなると言えます。

海外にいても資産形成が可能

このように、自分に代わって納税手続きなどをしてくれる方がいれば、海外に転勤となっても安心して不動産投資を続ける事ができる訳です。海外にいても家賃収入の助けもありローンを返済する事により元金返済が進み資産形成ができる事になります。

また海外移住の場合にも海外転勤と同様に国内のマンション投資の収益を得る事も可能となります。老後は海外へ移住する方も増えています。こうした場合にも賃貸管理や不動産管理も専門の不動産会社に委託する事ができますので、海外にいながらマンション経営が可能になります。

海外では物価も高く公的年金だけでは心もとない時でも不動産収入があれば安心です。海外移住した場合でも、海外の不動産を購入する事はそれぞれの国の規制などがあり難しい場合も多くなっています。また海外移住した場合は労働所得を得る事も難しいと言えます。国内に収益不動産を購入しておけば、海外にいても老後の公的年金と不動産収入の両方を得る事も可能となります。

日本から海外への家賃の送金については一定の手数料がかかりますので毎月ではなくあえて3ヵ月に1回とかまとめて送金してもらい、手数料の節約に結び付けている方もいらっしゃいます。

昔と比べて近年はインターネットを通じて世界的な通信環境が形成されていますので、海外にいても国内と密接な連絡を取る事ができますので、それほど心配はないと言えるのではないでしょうか。

まさにグローバル経済が進む中で、特に30代40代といった若手の方々は海外転勤になるケースも多くなります。自分自身がいつ海外転勤に行ってもいいようにご自身の資産など事前に対応できる知識・情報を事前に蓄えておく事が大切であると考えます。

また詳細につきましては物件を管理する不動産会社や税務署、税理士さんなどにお問合せ下さい。

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