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中銀カプセルタワーとマンションの資産価値【プロが教える不動産投資コラム】

読者の皆さん、「中銀(なかぎん)カプセルタワー」をご存じですか。東京中央区の銀座8丁目に1972年(昭和47年)に建設された建物で、有名な建築家である黒川紀章氏が設計を行いました。築50年となる2022年の4月に惜しまれつつ解体となりました。

筆者は以前、黒川紀章氏と講演会でご一緒させて頂いた経験があります。日本を代表する多くの建造物を設計され、建築業界において多大な功績を残された方でもありました。

今回のコラムでは日本で一番古いワンルームマンションとも言える中銀カプセルタワーと投資用マンションの資産価値について考えてみたいと思います。

中銀カプセルタワーとは

中銀カプセルタワーは、筆者も毎年多くの不動産会社の新入社員研修の一環として現地を視察する事もあり、不動産業界においても研究対象とする方も多くいらっしゃいました。

非常にユニークな外観を有するマンションで、首都高速道路沿いにありましたので車窓からも見る事ができました。

ゆりかもめ・都営大江戸線「汐留」駅や都営浅草線「新橋」駅から近く、JRでは「新橋」駅から直線距離にして400mと少しの距離です。周辺は高層のオフィスビルが建ち並ぶエリアでマンションも点在しています。

近代的なビルが建ち並ぶ中での特徴のある建物でその存在感も大きかった訳です。近くには「三井ガーデンホテル銀座プレミア」や「ベルサール汐留」、通りを挟んで「電通本社ビル」「カレッタ汐留」などもある一等地です。 近年大きく発展した汐留エリアに近く将来性を有する立地として、分譲主は先見性があったと言えます。

「職住近接」がコンセプトで建設された都心型マンション

中銀カプセルタワーの各住戸は四角いカプセルとなっており、交換できるようになっていましたが結局交換はされませんでした。また、このカプセルが連なる事で特徴的な外観となっていました。

部屋(カプセル)の専有面積は10㎡で作り付けのベッドやエアコン、冷蔵庫やステレオなどが装備されており、ユニットバスはありましたが、キッチンはなかったそうです。これは都心で働くサラリーマンは、食事は外で済ます事が前提になっていたようです。洗濯機置き場もなく、洗濯物はコンシェルジュサービスがあったようです。

こうして見てみると現在のワンルームマンションのコンセプトの元祖とも言えるのではないでしょうか。どちらかと言うとビジネスホテルに近かったかもしれません。 当時は高度経済成長の終わり頃で10%の経済成長率が続いていた時期です。

70年代には「モーレツ社員」という言葉が流行し、こうした時代に合致した都心型のサラリーマンのためのマンションと言えました。

長期に渡って資産価値が維持されてきたマンション

中銀カプセルタワーは発売当時の価格は1部屋が大体450万円位でした。解体前の2021年においても1,000万円以上の価格で取引され、賃貸の入居待ちの方も多かったようで、築50年を超えても長年に渡って資産価値が維持された訳です。 最終的には賃料は7~8万円位だったようですが、設備等がしっかりしていたら10万円位となったのではないでしょうか。

中銀カプセルタワーに学ぶワンルームマンション投資のコツは?

このように中銀カプセルタワーは長期間に渡って資産価値が維持されていましたので、ワンルームマンション投資において学ぶべき点について考えてみました。

1, 立地

中銀カプセルタワーのある銀座は、一等地でありその土地は限定的であります。また都心立地でなくても都心へアクセスしやすい駅周辺も人気が高く、こうした土地も限定的である事から、都心あるいは都心へアクセスしやすい土地・不動産は希少性も高く資産価値も落ちづらいと言えます。

2, 管理

中銀カプセルタワーは長期に渡って資産価値が維持されましたが、これは立地などの好条件だけではなく、定期的な建物管理が行われた証しとも言えます。現在のワンルームマンションはさらに管理のクオリティが高くなってきていますので、より将来的に資産価値が維持されると考えられます。

3, 外観

中銀カプセルタワーの外観・構造は大変ユニークで価値もありましたが、一般的には板状型など凝った形状でない方が維持管理もしやすいと考えられます。また設備等も特殊な設備は維持費もかかりますので、ランニングコストを考えた場合には設備はシンプルな方がよいと言えます。

4, 耐震基準

中銀カプセルタワーは1972年竣工でしたので現在の耐震基準を満たしていません。現在の耐震基準は1981年に制定された「新耐震基準」というものです。 現在、新規に発売されるワンルームマンションは当然の事ながらこうした基準を満たしていますので、地震などの際にも安心と言えます。

まとめ

一般的にマンション価格は「古くなると資産価値が下落する」と思われている方も世の中に多くいらっしゃると思いますが、中銀カプセルタワーのように立地条件が良く、さらにそこに再開発という要素も加わって賃料水準の高いエリアにあるマンションは資産価値が高く維持できると考えられます。

中銀カプセルタワーは残念ながら本年に解体されましたが、当時の建築技術と最新の建築技術とでは大きな差があり、現在の新築のワンルームマンションはその耐用年数は当時の新築物件と比べて格段に長くなってきています。

さらに、そこに優良な建物管理や定期的な修繕工事も加わっており、その差は歴然となる訳です。

資産寿命の長いマンションの条件として「建物のクオリティ」と「立地・管理」などが重要な要素であると言えるのではないでしょうか。

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